飲食店オーナー様向け|ネットの悪評・風評被害対策の完全ガイド

口コミ削除から弁護士費用の相場まで、もう一人で悩まないための実践的な知識

この記事では、飲食店のオーナー様が直面するネット上の風評被害に対し、冷静かつ戦略的に対応するための具体的な手順と予防策を網羅的に解説します。

現代において、SNSやGoogleマップ上に投稿された、たった一つのネガティブな口コミが、お店の売上に深刻な影響を及ぼすことは珍しくありません。しかし、だからといって感情的に対応してしまうと、事態をさらに悪化させる危険性があります。

具体的には、ネガティブな口コミの内容を正しく分類し、「プラットフォームへの削除依頼」「顧客の信頼を取り戻す誠実な返信」「悪質なケースでの法的措置」といった、状況に応じた最適な対応を見極める方法を深掘りします。さらに、炎上を未然に防ぐための従業員教育や、日々の口コミを経営改善に活かす仕組みづくりまで、具体的な事例を交えてお伝えします。

この記事を最後までお読みいただければ、あなたは風評被害をただ恐れるだけでなく、それを乗り越え、より強固なブランドを築くための知識と具体的な行動計画を手にすることができるでしょう。

【免責事項】

本記事は、飲食店経営における風評被害対策に関する情報提供を目的としており、法的な助言を行うものではありません。個別の事案に関する法的な判断や対応については、必ず弁護士等の法律専門家にご相談ください。


1. なぜ今、飲食店の評判管理がこれほど重要なのか?

かつて、飲食店の評判は、地域のお客様の口コミや雑誌の特集記事などを中心に形成されていました。しかし、スマートフォンの普及により、その主戦場は完全にオンライン、特にSNSとGoogleマップへと移行しています。この変化を理解することが、現代の評判管理の第一歩です。

1-1. 消費者の情報収集は「グルメサイト」から「SNS・Google」へ

2023年のある調査では、驚くべき事実が明らかになりました。消費者の約67%が飲食店の情報収集にSNSを利用しており、従来のグルメサイトを利用する層は、もはや11%に過ぎないのです。

出典)飲食店の情報収集、約7割が「SNS」を利用。待ち時間や混雑状況などの“正直レビュー”がカギ?【Lemon8調べ】

このデータは、お客様がお店を見つける場所が劇的に変わったことを示しています。特にInstagramの影響力は絶大で、飲食店の82.6%が集客目的で活用しているという調査結果もあります。

出典)SNSの最新トレンド – 飲食店の82.6%が集客にSNSを活用 … – SINIS

さらに重要なのは、SNSが単なる情報収集ツールに留まらない点です。消費者の84%が、SNSをきっかけに知ったお店へ実際に訪れているというデータもあり、SNSでの見え方が直接の来店動機に繋がっていることが分かります。

出典)飲食店におけるSNSについての意識調査 SNSから飲食店を知った83%、実際に来店した84

同時に、Googleマップの口コミ機能の重要性も増す一方です。消費者が最も口コミを投稿する可能性が高い場所として、29%がGoogleを挙げており、地域に密着したお店探しにおいて、Googleマップは欠かせないインフラとなっています。

出典)【業界別クチコミ調査】レストラン編 – ローカルSEO&MEOツール・Googleビジネスプロフィール一括管理ならローカルミエルカ

1-2. 「星の評価」が売上に与える致命的な影響

オンライン上の評判、特に星の数で示される評価点が、お客様の来店意思を大きく左右することは、多くの調査で裏付けられています。

NTTコム リサーチの調査によると、消費者の8割以上が、店舗やサービスを利用する際に口コミを気にしていると回答しています。

出典)クチコミ分析方法~集めたクチコミを店舗・サービスの改善に役立てるには~ | MEOチェキ BLOG

さらに深刻なのは、具体的な評価点がもたらす影響です。ある調査では、5点満点の口コミ評価が3.0点を下回ると、潜在顧客の6割が来店をためらうという、衝撃的な結果が出ています。

出典)口コミが5点満点中「3点未満」だと6割の消費者が来店をやめたくなる【エフェクチュアル調べ】

これは、低い評価が単にネガティブな印象を与えるだけでなく、「機会損失」という形で、直接的な売上減少に繋がることを意味します。根拠のない噂であったとしても、お客様は「念のため、この店はやめておこう」という心理になり、客足が遠のいてしまうのです。

出典)飲食店の風評被害対策は?発生源から予防・対応方法まで徹底解説 …

この背景には、「ウィンザー効果」として知られる心理法則が働いています。これは、お店自身が発信する情報よりも、利害関係のない第三者からの評価を信じやすいという心理傾向のことです。

出典)口コミ効果を科学的に検証!心理学的根拠や論文、統計データを元に解説! – オクゴエ!

オーナー様がどれだけ「うちの料理は美味しいです!」と宣伝するよりも、見知らぬユーザーが投稿した「美味しかったです」という一言の方が、はるかに高い信頼性を獲得してしまうのです。

1-3. 主要プラットフォームの特徴と戦略

限られた時間と労力を効果的に使うためには、各プラットフォームの特性を理解し、それぞれに合った戦略を立てることが不可欠です。

図解:主要プラットフォームの特徴と戦略

📍 Googleマップ

[特性] 全年齢層、地域密着型。即時性・利便性重視。

[課題] 口コミの量が多く、返信負荷が高い。MEOの知識が必要。

[戦略] 📈 MEOの継続的な最適化、全口コミへの迅速・丁寧な返信、正確な店舗情報の維持。

🍽️ 食べログ

[特性] 20~50代、食への関心が高い層。詳細情報を求める。

[課題] 専門レビュアーの影響力が大きい。スコア変動が複雑。

[戦略] 📊 高評価の維持とスコア分析、影響力のあるレビュアーへの間接的アプローチ、公式情報の充実。

📸 Instagram

[特性] 10~30代中心。ビジュアル・ライフスタイル重視。

[課題] 高品質なビジュアルコンテンツの継続的な制作負荷。

[戦略] ✨ 「映え」を意識した投稿、ユーザー投稿(UGC)の促進、フォロワーとの積極的な交流。

💬 X (旧Twitter)

[特性] 幅広い年齢層。リアルタイム性・拡散性重視。

[課題] 炎上リスクが最も高い。ネガティブ情報が瞬時に拡散。

[戦略] 🔥 迅速な危機対応体制の構築、コミュニティ管理と対話、トレンドを捉えた情報発信。

この表は、オーナー様が自店の状況に応じて、次の一手をどこに打つべきかを戦略的に判断するための羅針盤となります。


2. 悪評にどう向き合う?まず行うべき「冷静な分析」

ネガティブな口コミを発見したとき、反射的に腹が立ったり、落ち込んだりするのは自然な感情です。しかし、その感情のまま行動するのは得策ではありません。最初に行うべきは、感情を脇に置き、その内容を客観的に分析することです。

2-1. ほとんどの悪評は「経営改善のヒント」である

多くの方が「悪評はすべて不当な攻撃だ」と感じがちですが、データを見ると異なる側面が見えてきます。ある調査で、星2以下の低評価口コミ100件を分析したところ、その内容は大きく4つのカテゴリーに分類されました。

出典)【飲食店のクチコミを徹底調査】ネガティブなクチコミが投稿される理由は何?星2以下の100クチコミを徹底分析! | MEOチェキ BLOG

図解:低評価口コミの内容分析(星2以下)

47.5%

接客・スタッフの問題

「店員の態度が悪い」「呼んでも来ない」など

30.3%

料理・商品の問題

「料理が冷めている」「美味しくない」など

その他

オペレーションの問題

「待ち時間が長い」など

その他

衛生・店内環境の問題

「テーブルが汚れていた」など

この分類から分かる最も重要な事実は、ネガティブな口コミの大部分が悪意ある攻撃ではなく、実際のサービス提供過程における何らかの不備に起因する、お客様からの正直なフィードバックであるということです。

出典)【飲食店のクチコミを徹底調査】ネガティブなクチコミが投稿される理由は何?星2以下の100クチコミを徹底分析! | MEOチェキ BLOG

この視点に立つと、口コミサイトやSNSは、無料で利用できるリアルタイムの経営コンサルティングツールとして見ることができます。お客様がわざわざ教えてくれた改善点を真摯に受け止め、店舗運営の改善に繋げること。この建設的な姿勢こそが、長期的に強固な評判を築くための第一歩なのです。

2-2. 法的措置を考える前に:「意見」と「虚偽の事実」を見分ける

とはいえ、中には悪意を感じる投稿や、事実無根の投稿があるのも事実です。ここで重要になるのが、その口コミが法的に「意見論評」と「事実適示」のどちらに分類されるかを見極めることです。

📢 意見論評(Opinion/Critique)
投稿者の主観的な感想や評価であり、客観的な証拠で真偽を証明できないもの。
具体例:「あの店の料理はまずい」(出典)、「接客態度が悪い」(出典)
法的性質: 個人の感想と見なされ、表現の自由で保護されることが多く、これ自体を理由に法的な措置を取るのは非常に困難です。(出典)
🔍 事実適示(Factual Claim)
投稿者が具体的な事実を主張しており、客観的な証拠で真偽を検証できるもの。
具体例: 「厨房でゴキブリを見た」(出典)、「この店の肉を食べると必ず腹痛になる」(出典)
法的性質: これらの主張は、衛生検査記録や他の客の証言などで真偽を判断できます。もし主張が嘘であれば、後述する名誉毀損などに該当し、法的に対抗できる可能性が生まれます。

オーナー様が口コミに対して行動を起こす前に、自問すべきは「これは、私が不快に思う単なる『意見』なのか、それとも私が反証できる『虚偽の事実』なのか?」という点です。「まずい」という意見には顧客サービスとして対応し、「虫が入っていた」という虚偽の事実には法的対応を検討する。この冷静な切り分けが、泥沼の争いを避けるための重要なフィルターとなります。


3. 悪評が「違法」になる境界線とは?

単にネガティブな口コミというだけでなく、法律に触れる「権利侵害」と見なされるには、特定の要件を満たす必要があります。代表的な違法行為を理解し、どのケースが当てはまるかを見極めましょう。

図解:違法となる可能性のある投稿 유형

⚖️ 名誉毀損罪(刑法230条)

他人の社会的評価を低下させる可能性のある具体的な事実を、公然と示す行為です。

  • 要件① 公然と:ネット上など不特定多数が見られる場所で。
  • 要件② 事実を摘示し:真偽を問わず具体的な事実を挙げて。 (出典)
  • 要件③ 人の名誉を毀損した:社会的評価が下がるおそれがある。 (出典)

🗣️ 侮辱罪(刑法231条)

具体的な事実を示さずに、公然と人を侮辱する行為です。「バカ」「最低な店主」など、根拠のない抽象的な言葉での侮辱が該当します。(出典)

妨害罪(刑法233条)

嘘の情報を流して店の信用を傷つけたり(信用毀損罪)、威力を用いて業務を妨害したり(威力業務妨害罪)する行為です。

例:「あの店は食中毒を隠蔽している」(出典)、「大量の予約キャンセルを扇動する」(出典)

これらの法的定義を理解することで、問題の投稿がどの法律に触れる可能性があるのかを冷静に判断し、弁護士などに相談する際にも的確な情報を伝えることができます。


4. 被害を未然に防ぐ「守りの戦略」

問題が起きてから対応する「リアクティブ(受動的)」な姿勢だけでは、常に不安がつきまといます。本当に強いお店は、問題が起きにくい環境を日頃から作る「プロアクティブ(能動的)」な戦略、すなわち「守りの戦略」を実践しています。

4-1. 評判管理は日常業務:ポジティブな口コミを貯める「評判の資本」

オンライン評判管理(ORM)は、火消し作業ではなく、日常的に行うべき事業活動です。

出典)オンライン・レピュテーション・マネジメント | 誹謗中傷対策ならネット情報参謀セイメイ

日々の優れたサービスやお客様との誠実なコミュニケーションを通じて、良い口コミをたくさん集めておくこと。これは、銀行に預金するように「評判の資本」を積み立てる行為に他なりません。

例えば、500件の良いレビューがあり平均評価4.7のお店と、10件しかレビューがなく平均評価4.2のお店を想像してください。両方が同じ「星1」の低評価を受けたとしても、そのダメージは全く異なります。前者は膨大な高評価がクッションとなり、平均点への影響はごくわずかです。しかし後者は、たった一つの悪評で評価が急落し、お客様からの信頼を大きく損ないます

平時から良い評判を積み重ねておくことは、万が一の悪評に対する「保険」のようなものです。十分な「評判の資本」を確保することこそ、継続的な評判管理の最も重要な目標と言えるでしょう。

4-2. SNSの正しい活用法:クレームの前に「人間関係」を築く

ソーシャルメディアは、お店の情報を一方的に流すだけのツールではありません。その本質的な価値は、お客様と直接、双方向のコミュニケーションが取れる点にあります。

出典)飲食店のSNS運用。メリット・デメリットを徹底解説! – インフル …

お店のリアルな雰囲気を伝え、コメントやメッセージに迅速に返信することで、お客様との間に信頼関係が生まれます。

出典)飲食店のSNS運用。メリット・デメリットを徹底解説! – インフル …

考えてみてください。いつもInstagramで美味しそうな写真を見ていて、一度自分のコメントに返信をくれたお店があったとします。そのお店に対して、あなたは少なからず親近感を抱いているはずです。もし、そのお店で少し料理の提供が遅いといった些細なトラブルがあっても、いきなりSNSで厳しい言葉で批判するでしょうか? おそらく、寛大な気持ちで受け止めるか、あるいはダイレクトメッセージでそっと教えてくれる可能性が高いはずです。

なぜなら、そこには既にクレームを超える「人間的なつながり」が存在するからです。平時からのSNSでの丁寧なコミュニケーションは、単なる宣伝活動ではなく、将来起こりうる問題を穏便に解決するための「予防的顧客サービス」なのです。

4-3. 最大の内部リスク「バイトテロ」を防ぐSNSガイドラインの策定

飲食店の評判に対する深刻なリスクは、時に外部の顧客からではなく、内部の従業員から生じます。不適切な動画投稿などで世間を騒がせる、いわゆる「バイトテロ」は、一夜にしてお店のブランド価値を破壊しかねない重大なリスクです。

出典)【弁護士監修】SNSの不適切投稿による炎上事例と対策 – エルプランニング

このリスクを防ぐためには、全スタッフを対象とした、明確なソーシャルメディアポリシー(利用規則)を策定し、周知徹底することが不可欠です。これは口頭での注意に留めず、就業規則の一部として正式に規定するべきです。

出典)従業員によるSNS上の不適切発言問題で会社ができる3つのこと – 企業法務弁護士ナビ

ガイドラインに含めるべき主要な項目は以下の通りです。

  • 機密情報の投稿禁止: 未発表の新メニューや売上データなど、会社の内部情報を投稿しない。(出典)
  • 顧客情報の投稿禁止: 有名人の来店情報を含め、お客様のプライバシーに関わる情報を本人の許可なく投稿しない。(出典)
  • 店内での撮影に関する規則: 業務中の撮影や、お客様による撮影に関する明確なルールを定める。(出典)
  • 他者への誹謗中傷の禁止: お客様、同僚、競合他社を問わず、誹謗中傷や攻撃的な投稿を禁じる。(出典)

ルールを作るだけでなく、入社時の研修などでその重要性を伝え、誓約書に署名を求めるなどの取り組みが、従業員の意識を高め、お店を内部リスクから守ることに繋がります。

出典)従業員のSNSが炎上してしまったら。炎上事例や対処方法、未然防止策を紹介


5. 【実践編】ネガティブな口コミへの具体的な対応手順

どんなに予防策を講じても、ネガティブな口コミが発生してしまう可能性はゼロではありません。その時に備え、冷静かつ効果的に対応するための具体的な手順を知っておきましょう。

5-1. 発見から48時間が勝負:緊急対応チェックリスト

破壊的な悪評が投稿された直後の48時間は、被害の拡大を防ぐ上で極めて重要です。パニックに陥らず、以下の手順に従って規律ある行動をとりましょう。

緊急対応フロー

1

冷静な事実確認

POS、監視カメラ、スタッフへの聞き取りで客観的事実を確定。

2

証拠の保全

URL、日時、内容が分かるようにスクリーンショットを撮影・保存。

3

対応戦略の策定

事実に基づき、公開返信、削除依頼、法的措置、静観などを決定。

  1. 冷静な事実確認(Calm, Objective Fact-Checking)
    何よりも先に、徹底した内部調査を行います。(出典) 投稿で指摘されている内容は事実か、POSデータや監視カメラ、スタッフへの聞き取りを通じて客観的な事実を確定させます。この事実確認が、その後の全ての対応の土台となります。
  2. 証拠の保全(Evidence Preservation)
    将来的な法的措置の可能性も考え、問題の投稿を証拠として保全します。口コミの全文、投稿者名、投稿日時、URLが分かるように、必ずスクリーンショットを撮影・保存してください(出典)
  3. 対応戦略の策定(Formulation of Response Strategy)
    事実確認と証拠保全が完了して初めて、具体的な対応を検討します。選択肢は「公開返信」「削除依頼」「法的措置の検討」「静観」など多岐にわたります。衝動ではなく、事実と戦略に基づいて次の行動を決定します。

5-2. プラットフォーム別・口コミ削除依頼の方法

口コミの削除は、「内容が気に入らない」という理由では認められません。各プラットフォームが定める利用規約やガイドラインへの「明確な違反」がある場合にのみ可能です。

📍 Googleマップ
手順: 該当口コミの横にあるメニュー(︙)から「レビューを報告」を選択します。(出典)
対象: スパム、虚偽、いやがらせ、個人情報など、Googleが定めるポリシーに違反する内容が対象です。(出典) ただし、単なる主観的な不満はポリシー違反と見なされない点に注意が必要です。(出典)
🍽️ 食べログ
手順: 各口コミの下部にある「問題のある口コミを連絡する」ボタンから通報します。(出典)
対象: 実際に飲食していない口コミ、事実確認が困難な健康被害の断定(例:「ここの肉で食中毒になった」)、個人への誹謗中傷、断定的な批判(例:「行く価値が無い」)などが対象となります。(出典)
💬 X (旧Twitter) / 📸 Instagram
手順: 該当の投稿やコメントのメニューから「報告する」を選択し、ガイドライン違反の理由(嫌がらせ、ヘイトスピーチなど)を選んで報告します。(出典)(出典)
対象: 攻撃的な行為や嫌がらせ、個人情報の共有などが対象となります。(出典)
掲示板 5ちゃんねる (5ch)
手順: 他のSNSより手続きが複雑です。明確な名誉毀損や個人情報漏洩については、専用のメールアドレスへ本人確認書類を添えて依頼します。(出典)
法人に関する誹謗中傷は原則削除対象外とされるなど、独自のルールがあるため注意が必要です。(出典)

5-3. 削除できない口コミへの「神対応」返信術

削除が難しい、しかし放置もできないネガティブな口コミへの公開返信は、評判管理の腕の見せ所です。ここでの目的は、投稿者本人を言い負かすことではありません。そのやり取りを見るであろう、未来のすべてのお客様に対して、「このお店は批判に真摯に対応する、プロフェッショナルで誠実な店だ」という印象を示すことです。

やってはいけないNG対応

最も避けるべきは、「完全な無視」と「攻撃的・挑発的な返信」です。(出典) 無視は顧客の声を軽視する姿勢と受け取られ、挑発的な返信(例:「お口に合わないなら他店へどうぞ」)は、さらなる炎上を招きかねません。(出典)

好印象を与える返信の原則とテンプレート

成功する返信は、以下の要素を含んでいます。

  • 迅速な謝罪と共感: まず、お客様が不快な経験をしたという「事実」に対して謝罪します。「ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません」という一文で、顧客の感情に寄り添う姿勢を示します。(出典)
  • 事実関係の冷静な説明: お客様の誤解がある場合は、冷静に事実を伝えます。「ご指摘の件ですが、他のお店とお間違いではないでしょうか」といった丁寧な表現を心がけます。(出典)
  • 具体的な改善策の提示: 指摘が事実であれば、具体的な改善策や再発防止策を提示し、改善意欲を示します。「ご指摘を真摯に受け止め、スタッフへの指導を徹底してまいります」といった言葉は信頼回復に繋がります。(出典)

【返信テンプレート例:接客に関する不満】

〇〇様
この度は、私どものスタッフの対応により、ご不快な思いをさせてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます。

ご指摘いただいた点を真摯に受け止め、早速全スタッフと共有し、接客サービスの基本に立ち返り指導を徹底いたしました。

貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございます。もしよろしければ、改めて私どものサービスを体験いただく機会をいただけますと幸いです。

店長 △△

誠実な公開返信は、ピンチをチャンスに変える、最も費用対効果の高いブランディング活動の一つとなりうるのです。


6. 自分だけでは解決できない…専門家への相談という選択肢

セルフケアでは対応しきれない、悪質で深刻なケースでは、専門家の力を借りることも重要な選択肢です。

6-1. 匿名の犯人を特定する「発信者情報開示請求」

悪意のある匿名の投稿者を特定するための法的手続きが「発信者情報開示請求」です。これは、プロバイダ責任制限法(現:情報流通プラットフォーム対処法)に基づいて行われます。(出典)

かつてこの手続きは、サイト運営者と通信事業者のそれぞれに対して裁判を起こす必要があり、時間も費用もかかる大変なものでした。(出典)

しかし、2022年10月の法改正により、この二段階の手続きを一つに統合した「発信者情報開示命令」という、より迅速で簡易な新しい裁判手続きが創設されました。(出典) これにより、泣き寝入りせざるを得なかった多くのケースで、投稿者の特定がより現実的な選択肢となっています。

6-2. 専門業者の活用:逆SEOとモニタリング

法的な削除が難しい場合、専門的な評判管理サービスも有効です。

モニタリング
自社の店名などがネット上でどう言及されているかを24時間365日体制で監視し、ネガティブな投稿を早期発見するサービスです。(出典)
逆SEO (Reverse SEO)
ネガティブな情報が掲載されたページの検索順位を下げる施策です。これは、自社で管理できるポジティブな情報(公式サイト、ブログ、SNSなど)を複数作成し、それらのページの評価を高めることで、相対的にネガティブなページの順位を検索結果の2ページ目以降に押し下げる手法です。(出典)

6-3. 弁護士や専門業者に頼むと、いくらかかるのか?

専門家への依頼には当然費用が発生します。感情的に突っ走る前に、冷静な費用対効果の分析が不可欠です。

図解:専門家への依頼費用と期間の目安

弁護士依頼(開示請求)

匿名の投稿者を特定する裁判手続き。

費用: 約30万~70万円以上 (出典)
期間: 3~9ヶ月

弁護士依頼(損害賠償)

特定した投稿者への損害賠償請求。

費用: 着手金15万円~+成功報酬 (出典)
期間: 6ヶ月~数年

専門業者(逆SEO)

ネガティブな検索結果の順位を押し下げる。

費用: 月額 約10万~50万円 (出典)
期間: 3~6ヶ月以上

専門業者(モニタリング)

オンライン上の言及を監視し、リスクを報告。

費用: 月額 約1万~30万円 (出典)
期間: 継続的

法的手続きにかかった費用が、得られる賠償額(法人の名誉毀損では50万~100万円が相場)を上回るリスクも十分にあります。(出典) 法的措置は経済的な利益のためというより、悪質な攻撃を止めさせるための最終手段と位置づけるのが賢明かもしれません。

日々の評判管理と集客の手間を、テクノロジーで解決しませんか?

ここまでお読みいただき、オンラインでの評判管理がいかに重要で、同時に多大な知識と労力を要するかをご理解いただけたかと思います。

しかし、日々の仕込みや接客、スタッフの管理に追われる中で、SNSの更新や口コミへの返信、Googleマップ情報の管理まで手が回らない、というのが多くのオーナー様が抱える正直な悩みではないでしょうか。 

もし「評判管理の重要性は痛いほど分かっているけれど、時間も専門知識もない…」とお悩みでしたら、Web集客の自動化ツールがお役に立てるかもしれません。 

例えば、弊社が提供する飲食店特化型のオールインワン集客ツール「TITAN(タイタン)」は、まさにそうしたオーナー様のお悩みを解決するために開発されました。 TITANは、評判管理に欠かせないGoogleマップ対策(MEO)の初期設定診断や運用をサポートする機能を備えています。 

さらに、専門知識が必要なWeb広告の運用をAIが自動で最適化してくれるため、オーナー様は広告運用の手間から解放され、本来最も大切にすべき業務である「美味しい料理と素晴らしいサービスの提供」に、より多くの時間を注ぐことができます。 

もし、もう少し詳しい情報にご興味をお持ちいただけましたら、公式サイトをご覧いただくこともできます。

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7. 知らないと損をする公的支援と最新ルール

専門家への依頼はハードルが高いと感じる場合でも、一人で抱え込む必要はありません。無料で相談できる公的な窓口も存在します。

7-1. 無料で相談できる公的な窓口

  • 総務省「違法・有害情報相談センター」: ネット上の違法情報について、サイト管理者への削除依頼の方法などを無料で相談できます。(出典)
  • 法務省「地方法務局」: 名誉毀損やプライバシー侵害など人権問題として相談でき、悪質な場合は法務局が削除要請を行ってくれることもあります。(出典)
  • 警察「サイバー犯罪相談窓口」: 脅迫や業務妨害など、明確な犯罪行為が含まれる場合に相談すべき窓口です。(出典)
  • 日本司法支援センター「法テラス」: 経済的な理由で弁護士への相談が難しい場合に、無料の法律相談や弁護士費用の立替え制度を利用できます。(出典)

高額な民間サービスに踏み切る前に、まずはこれらの窓口で初期相談を行うことが、賢明な第一歩です。

7-2. 2023年10月から始まった「ステマ規制」とは?

2023年10月1日、「ステルスマーケティング(ステマ)」が景品表示法違反として明確に規制対象となりました。

出典)令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 | 消費者庁

これは、お店がインフルエンサーなどにお金を払って宣伝を依頼しているにも関わらず、それが広告であることを隠して投稿することを禁止するものです。(出典)

もし宣伝を依頼した場合は、投稿内に「広告」「PR」「プロモーション」といった文言を、消費者が明確に認識できる形で表示することが義務付けられています。(出典)

このルールに違反すると、事業者に対して措置命令が出され、その事実が公表されるため、大きな評判悪化に繋がります。良い評判を得るための施策が、逆に評判を落とす結果とならないよう、インフルエンサーを起用する際は、このルールを必ず守るようにしてください。


8. まとめ:この記事のポイント

飲食店の風評被害対策は、もはや他人事ではありません。しかし、その本質を理解すれば、過度に恐れる必要はないのです。

今回の要点を振り返りましょう。

  • 主戦場はSNSとGoogleマップ: 星の評価が売上に直結するため、日頃から良い評判を積み重ねる「評判の資本」が重要です。
  • 悪評は経営改善のヒント: 感情的にならず、まずは冷静に事実を確認・分析し、お客様の貴重な声として捉えましょう。
  • 最適な対応を選択する: ガイドライン違反は「削除依頼」、不満には「誠実な返信」、違法行為には「法的措置」と、冷静に見極めることが求められます。
  • 一人で抱え込まない: 専門家や無料の公的相談窓口など、利用できるリソースはたくさんあります。

元アルバイトによる虚偽の投稿に苦しめられながらも、オンラインで反論するのではなく、目の前のお客様への真摯なサービス提供に集中し、常連客の信頼を繋ぎとめて危機を乗り越えた蕎麦屋の事例があります。(出典)

この事例が示すように、オンライン上の評判という「デジタルの問題」に対する究極の解決策は、結局のところ、店舗での優れた顧客体験という「物理的な現実」にあります。

オンラインの世界は、お店の現実を映し出す鏡です。この記事で得た知識を武器に、日々の素晴らしいお店作りを続け、お客様からの「美味しかった」「また来ます」という最高の評判で、あなたのオンライン上のページを埋め尽くしていきましょう。

 

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