【飲食店経営者様へ】「旨い」だけでは店は潰れる!利益を確実に残す「脱・どんぶり勘定」のススメ|倒産事例から学ぶ計数管理術

「あの店、美味しかったのに、いつの間にか閉店している…」。あなたの街でも、そんな経験はありませんか?
料理の腕と情熱さえあれば、飲食店は成功するはず。そう信じて独立した多くのオーナーが、なぜか経営の壁にぶつかり、静かに店を閉じていきます。

この記事でお伝えしたいのは、その最大の原因が「どんぶり勘定」にあるという厳しい現実です。そして、この記事を最後まで読めば、どんぶり勘定の本当の恐ろしさと、あなたの城である大切なお店を、感覚や情熱だけでなく、確かな数字で守り抜くための具体的な方法がわかります。

多くの職人気質のオーナーは、日々の売上を見て一喜一憂し、レジにある現金だけで経営を判断してしまいがちです。しかし、帳簿上は利益が出ているのに支払いができなくなる「黒字倒産」という、最も恐ろしい罠がすぐそこに口を開けているかもしれません。

この記事では、具体的な失敗事例を基に、どんぶり勘定が引き起こす悲劇を解き明かし、感覚経営から脱却して、利益を確実に残す強いお店を作るための第一歩を、あなたと一緒に踏み出していきます。

この記事で解説する内容

  • ✅ どんぶり勘定が引き起こす「黒字倒産」の本当の恐ろしさ
  • ✅ 経営を蝕む「3つの見えない敵」の正体
  • ✅ 明日からできる!利益を残すための具体的な計数管理術
  • ✅ 守りを固めた後の「攻め」の集客戦略について

【免責事項】
本記事は、飲食店の経営改善の一助となる情報提供を目的としています。掲載内容の正確性には万全を期しておりますが、特定の経営成果を保証するものではありません。税務や財務に関する最終的な経営判断は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。


1. 【悲報】2024年、飲食店倒産は過去最多ペース。もはや他人事ではない現実

「うちは大丈夫」と思っている方も、まずはこの現実を知ってください。2023年の飲食業の倒産件数は、過去最多の869件に達し、前年から約8割も増加しました。
出典)2023年「飲食業」の倒産 過去最多の869件、前年比79.6%増 ~ 物価高・人手不足・コロナ禍の過剰債務が経営を圧迫 ~

物価高や人手不足といった外部環境の変化はもちろんですが、実は「味は良いのに潰れる店」には、致命的な共通点があります。それが、再三お伝えしている「どんぶり勘定」です。

どんぶり勘定の本当の恐ろしさは、経営者が気づかないうちに、じわじわとお店の体力を奪っていくことにあります。そして、その先にあるのが、利益は出ているはずなのに現金が底をつき、倒産に至る「黒字倒産」なのです。

実際に、倒産した中小企業のうち約半数は、帳簿上は黒字だったという衝撃的なデータもあります。
出典)中小企業・小規模事業者経営力強化・事業承継支援ワーキンググループ(第2回)事務局説明資料

これは決して、特別なことではありません。なぜ、このような悲劇が起きてしまうのでしょうか。その原因は、経営を蝕む「3つの見えない敵」にあります。


2. あなたの店は大丈夫?倒産につながる3つの「見えない敵」

どんぶり勘定を続けていると、これら3つの敵に気づくことができません。あなたの店にも潜んでいないか、チェックしてみてください。

📉見えない敵①:高すぎる「原価」

「良い食材を使えば儲かる」という思い込みや、「歩留まり」を無視した甘い原価計算が、売れば売るほど赤字になる「お荷物メニュー」を生み出します。情熱が裏目に出て、利益を圧迫している危険性があります。

👥見えない敵②:野放しの「人件費」

なあなあのシフト管理や高い離職率が、サービスの質を低下させ、目に見えないコストを増大させます。人件費を「支払額」ではなく「売上に対する比率」で管理できていないと、経営は悪化の一途を辿ります。

💸見えない敵③:利益と現金のズレ

帳簿上は黒字でも、手元に現金がなければ店は潰れます。これが「黒字倒産」です。特にカード決済の売上は入金までにタイムラグがあり、この「現金の流れ」を把握していないと、突然資金がショートするリスクがあります。

2-1. 見えない敵①:高すぎる「原価」

料理人としての情熱が、時として経営の足かせになることがあります。

情熱の罠:「良い食材を使えば儲かる」という危険な思い込み

「最高の食材でお客様を喜ばせたい」。その想いは、料理人として当然の誇りです。しかし、ビジネスとしてお店を続けるには、お客様が「いくらなら支払うか」という視点も不可欠です。情熱のままに高級食材を使い、採算を度外視した結果、お客様は満足でも店の利益はほとんど残らない…そんな本末転倒な事態に陥っていませんか?

看板メニューが赤字を垂れ流す「お荷物メニュー」に?

あるシェフの店では、新鮮な魚介をふんだんに使った原価率70%の「特製シーフードパスタ」が看板メニューでした。お客様からの注文も絶えない人気商品でしたが、彼はそのメニューが売れれば売れるほど店の利益を圧迫する「お荷物メニュー」であることに気づいていませんでした。一方で、片手間で出していた原価率10%のドリンクは、大きな利益源でした。この構造を知らないままでは、努力が報われることはありません。

【今すぐ確認!】正しい原価計算、できていますか?

正確な原価計算は、感覚ではなく数字で経営するための第一歩です。ポイントは、野菜の皮や魚の骨など、下処理で廃棄される部分を考慮する「歩留まり」です。

例えば、1kg 1,000円で仕入れた野菜の歩留まり率(実際に使える部分の割合)が80%の場合、可食部1kgあたりの実質的な原価は1,250円になります。この一手間を省くと、原価を不当に安く見積もってしまい、知らないうちに赤字メニューを生み出す原因となります。

あなたの店はどのくらい?業態別・原価率ベンチマーク

一般的に飲食店の原価率は30%が目安と言われますが、業態によって適正値は大きく異なります。以下の表で、自店の数値が健全な範囲にあるか確認してみましょう。

※スマホでは表を横にスクロールできます

業種 原価率の目安
寿司店 40~45%
高級レストラン 35~40%
焼肉店 30~35%
居酒屋 30~35%
カフェ 30~35%
ラーメン店 30%
バー 20~30%
デリバリー専門店 20~25%

出典)The following table: および 飲食店の適切な原価率とは?考え方や計算方法など徹底解説 – ポスタス

大切なのは、原価率の高い看板メニューと、低い利益貢献メニューをバランス良く組み合わせ、お店全体で利益をコントロールする視点です。

2-2. 見えない敵②:野放しの「人件費」

「人」に関わるコストは、見えにくい問題が潜んでいます。

「身内だから安心」が落とし穴に。なあなあな関係が生む「友情税」

友人や家族を雇うことは、一見安心なように思えます。しかし、遅刻やルール違反をしても「友情を壊したくない」と強く注意できなかったり、公私の区別が曖昧になったりすることで、現場の規律が乱れ、他の従業員の士気を下げてしまうことがあります。これは、目に見えない「友情税」という名のコストです。

スタッフがすぐ辞める…高い離職率がもたらす負のスパイラル

飲食業界はもともと離職率が高い業界です。特にどんぶり勘定の店では、場当たり的なシフト管理や不公平な評価が横行しがちで、従業員のモチベーションは下がる一方です。人が辞めれば残ったスタッフの負担が増え、サービスの質が低下。その結果、客足が遠のき、さらに労働環境が悪化する…という負のスパイラルに陥ります。

人件費は「売上に対して何%か」で見るのが鉄則

毎月の給与支払額だけを見ていては、経営判断を誤ります。重要なのは、人件費が売上に対してどのくらいの割合を占めるかを示す「人件費率」を常に把握することです。この数字を見ずに、暇な時間帯にも「念のため」とスタッフを配置し続けることは、無駄なコストを垂れ流しているのと同じなのです。

2-3. 見えない敵③:利益と現金の「致命的なズレ」

これが、どんぶり勘定の経営者が最後に直面する、最も致命的な問題です。

なぜ利益があるのにお金がない?「黒字倒産」のメカニズム

損益計算書の上では黒字でも、銀行口座に支払いのためのお金がなければ、店は潰れます。これが黒字倒産です。特に、クレジットカード決済の比率が高い現代の飲食店では、このリスクが格段に高まっています。

【具体例で学ぶ】売上が絶好調だったのに資金ショートした店の末路

悲劇のタイムライン:黒字倒産の現実

1ヶ月目
売上絶好調!
月末に帳簿を締め、利益30万円を確認。オーナーは一安心。

2ヶ月目 中旬
入金と支払いの集中
前月のカード売上がようやく入金。しかし同日、家賃・仕入代金・税金等の支払いが集中。

結末
資金ショート
カード入金額では支払いをまかなえず倒産へ。日頃のどんぶり勘定が原因で、銀行からの融資も断られる。

キャッシュレス化が隠れたリスクに。入金サイクルの罠

かつては、忙しい一日の終わりにはレジに現金が溢れていました。しかし今は、クレジットカード会社からの「未収金」が積み上がるだけです。売上が発生した日と、実際にお金が口座に振り込まれる日のタイムラグを理解し、未来の支払いを予測する資金管理ができていないと、成功しているはずのお店でも、突然死を迎えてしまうのです。


3. 明日から始める!「脱・どんぶり勘定」3つの具体策

では、どうすればこれらの悲劇を避けられるのでしょうか?難しく考える必要はありません。今日から実践できる、3つの具体的な取り組みをご紹介します。

3-1. 具体策①:生命線「FLコスト」を60%以下に死守する

飲食店経営において、最も重要な経営指標が「FLコスト」です。これは、食材費(Food Cost)と人件費(Labor Cost)を合計したもので、経営の根幹をなす2大コストです。

そして、その売上高に占める割合である「FL比率」を常に60%以下に抑えること。これが、利益を確保するための黄金ルールです。55%以下なら優良、65%を超えると赤字の危険水域と心得ましょう。

※スマホでは表を横にスクロールできます

業態 食材費(F)比率 人件費(L)比率 FL比率(合計)
レストラン 31~35% 25~36% 56~71%
カフェ 24~35% 25~36% 49~71%
ラーメン店 30~35% 25~30% 55~65%
焼肉店 38~42% 18~22% 56~64%
居酒屋 28~35% 25~32% 53~67%

出典)The following table: および 飲食店経営にはFLコストが重要!目安や業態ごとの適正値を解説 – クロックキッチン
注: 上記はあくまで目安です。大切なのは、FとLの合計が60%未満になるように、自店の特性に合わせてバランスを管理することです。

3-2. 具体策②:「日次決算」と「損益分岐点」で経営を”見える化”する

感覚経営から脱却するために、2つの簡単な分析ツールを導入しましょう。

たった10分!閉店後の「日次決算」

これは、お店の健康状態を毎日チェックする「体温測定」のようなものです。その日の売上、概算の食材費と人件費、経費を差し引いて、「今日の営業は黒字だったのか、赤字だったのか」を把握するだけ。この毎日の習慣が、数字で考える経営体質を作ります。

「損益分岐点」で目標を具体的にする

これは「赤字にならないためには、最低いくら売上が必要か?」を明確にする分析です。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 – 変動費率)
(※変動費率 = 変動費 ÷ 売上高)

「今月は損益分岐点の〇〇万円を突破するぞ!」と、目標が具体的になるだけで、日々の行動が変わってきます。

3-3. 具体策③:テクノロジーを「右腕」にする

かつては専門知識が必要だった計数管理も、今やテクノロジーの力で誰でも実践できます。

Excelやアプリで原価計算を自動化

まずは、インターネットで無料配布されているExcelの原価計算テンプレートを使うだけでも大きな一歩です。レシピの原価計算を自動化してくれるスマートフォンアプリもたくさんあります。

POSレジは単なるレジではない「頭脳」である

現代のPOSレジは、どのメニューがいつ売れたか(ABC分析)、どの時間帯が混雑するかといった経営判断に役立つデータを自動で蓄積・分析してくれます。このデータを活用すれば、儲かるメニューへの改善や、無駄のないスタッフ配置が可能になります。

クラウド会計ソフトで経理の手間を大幅削減

「マネーフォワード クラウド」や「freee」といったクラウド会計ソフトは、POSレジや銀行口座と連携させることで、日々の取引記録を自動化できます。経理の知識がなくても、正確な財務状況をリアルタイムで把握できる、強力な味方です。


4. 【補足】守りを固めたら「攻め」の準備を。Web集客で売上を最大化する

ここまでお伝えした計数管理で、利益がしっかり残る「守り」の強い体質を作ることができました。しかし、お店をさらに成長させるには、新しいお客様に来ていただく「攻め」の取り組み、つまり集客が欠かせません

「日々の業務が忙しくて、集客にまで手が回らない…」
「Web広告やSNSが良いとは聞くけど、何から始めればいいかサッパリわからない…」

というのが、多くのオーナー様の本音ではないでしょうか。

もし、あなたが同じようなお悩みをお持ちでしたら、専門知識がなくても、まるでプロの担当者がついているかのようにWeb集客を「自動化」できるツールがお役に立てるかもしれません。

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5. まとめ:あなたの料理を未来へ繋ぐために

「旨い」と評判だったお店が、なぜ潰れてしまうのか。その答えは、決して料理の味や情熱の不足ではありません。最後に、この記事のポイントを振り返ります。

「脱・どんぶり勘定」4つの鉄則

  • 1. 敵を知る:「どんぶり勘定」は、味の良い店をも潰してしまう、静かで最も恐ろしい敵である。経営を蝕むのは「高すぎる原価」「野放しの人件費」「利益と現金のズレ」という3つの見えない敵。
  • 2. 黄金ルールを守る:生命線である「FL比率60%以下」を死守し、「日次決算」と「損益分岐点」で経営を”見える化”することが不可欠。
  • 3. テクノロジーを味方につける:POSレジや会計ソフトなど、現代のテクノロジーを積極的に活用し、感覚だけに頼る経営から今こそ脱却する。
  • 4. 土台を固め、未来へ繋ぐ:計数管理は、料理への情熱を縛るものではなく、その素晴らしい料理を、10年、20年先もお客様に届け続けるために不可欠な土台である。

あなたの価値ある一皿を、未来へと繋ぐために。
今日から、数字という名の羅針盤を手に、新たな航海へ出発しましょう!

 

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