飲食トレンドの罠|タピオカ・高級食パン・からあげの失敗から学ぶ、ブームに頼らない店の作り方

タピオカ、高級食パン、そしてからあげ。これらの言葉を聞いて、一世を風靡した飲食店の行列や、メディアの熱狂的な報道を思い出す方は多いのではないでしょうか。
しかし、そのブームが落ち着いた今、私たちの身の回りから多くの専門店が姿を消していることにもお気付きかもしれません。

この記事では、なぜ多くの飲食店がブームに乗って急成長し、そしてブームと共に消えてしまうのか、その構造的な理由を解き明かします。
具体的には、タピオカ、高級食パン、からあげという代表的な3つのブームを取り上げ、その裏で実際に起こった失敗の事例を深く分析します。

これらの事例から見えてくるのは、驚くほど共通した「失敗の法則」です。
この記事を最後までお読みいただくことで、一過性の流行に踊らされることなく、時代の変化に左右されない、本当に強い飲食店の作り方に関する具体的な知見を得ることができるでしょう。

免責事項

本記事は、飲食業界のトレンドや過去の事例に関する情報提供を目的としています。掲載された情報を利用して行う一切の行為(投資、開業、経営戦略の決定など)について、その結果を保証するものではありません。最終的なご判断は、ご自身の責任において行われますようお願い申し上げます。


1. ブームという甘い罠:なぜ多くの店は熱狂の後に姿を消すのか?

飲食業界におけるトレンドは、事業者にとって非常に強力な魅力を持っています。
それは単なる流行ではなく、消費者の心理や市場の力学が複雑に絡み合った社会現象です。

ブームの初期には、いくつかの共通した追い風が吹きます。

ブームを加速させる3つの追い風

🛍️

消費者の心理的欲求

「ちょっとした贅沢」や「自分へのご褒美」といった手頃な高級感を求める心理が、高級食パンのようなブームの根底にあります。
出典)飲食トレンドの光と影:ブームに乗り、ブームに消えた飲食店の失敗事例分析レポート

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SNSによる拡散力

タピオカブームが証明したように、「SNS映え」する見た目は、消費者が自ら発信者となり、爆発的な流行を生み出します。
出典)飲食トレンドの光と影:ブームに乗り、ブームに消えた飲食店の失敗事例分析レポート

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参入障壁の低さ

タピオカやからあげ専門店のように、省スペース・低資金で開業できる手軽さは、多くの新規参入者を惹きつけ、ブームを加速させます。
出典)飲食トレンドの光と影:ブームに乗り、ブームに消えた飲食店の失敗事例分析レポート

しかし、この初期の熱狂は、事業者に「目の前のブームが永遠に続く」という危険な幻想を抱かせがちです。
多くの事業者は、この一時的な流行を恒久的な市場と勘違いし、過剰な投資や無謀な拡大戦略に踏み切ってしまいます。これが、のちに訪れる悲劇の序章となるのです。
出典)飲食トレンドの光と影:ブームに乗り、ブームに消えた飲食店の失敗事例分析レポート


2. 【事例1:タピオカ】社会現象から一転、なぜブームは崩壊したのか

2018年頃から本格化した第三次タピオカブームは、まさに社会現象でした。
カラフルな見た目やカスタマイズ性が若者文化と結びつき、爆発的に店舗数を増やしました。
出典)飲食トレンドの光と影:ブームに乗り、ブームに消えた飲食店の失敗事例分析レポート

しかし、その熱狂は長くは続きませんでした。衰退の要因は、連鎖的に発生しました。

タピオカブーム崩壊の連鎖

1. 市場飽和と希少性の喪失

新規出店が乱立し、「いつでもどこでも手に入る」状況に。かつての行列が象徴していた希少価値が完全に失われました。
出典)タピオカ屋はどこへ消えた!?明暗を分けるビジネスチャンスと …

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2. コモディティ化と差別化の困難

多くの店が類似商品を提供し、消費者は味に単調さを感じ始めました。ブランドの独自性構築が困難になりました。
出典)タピオカ屋はどこへ消えた!?明暗を分けるビジネスチャンスと …

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3. 経済的圧力と外的ショック

原材料費の高騰が利益を圧迫。さらに新型コロナが「街歩き飲み」文化を直撃し、売上に決定的な打撃を与えました。
出典)タピオカ屋はどこへ消えた!?明暗を分けるビジネスチャンスと …

財務省の貿易統計を見ても、タピオカの輸入量はブームのピークを境に劇的に減少しており、ブームがいかに一時的な熱狂であったかがデータで裏付けられています。
出典)なぜタピオカ屋は消えたのか?マーケターが知るべき市場変化の真実 – 勝手にマーケティング分析

2-1. 生存者の戦略:「ゴンチャ」はなぜ生き残れたのか

多くのタピオカ店が淘汰される中、大手チェーンの「ゴンチャ(Gong Cha)」は成長を続けています。
その成功は、明確な戦略に基づいています。

ゴンチャの最大の戦略は、自らを「タピオカ屋」ではなく「ティー専門ブランド」として再定義したことです。
出典)タピオカブームが去った後も国内年間利用者約3000万人突破の快 …
彼らはタピオカをあくまで数あるトッピングの一つと位置づけ、高品質なお茶を主軸に据えました。

さらに、旬のフルーツを使った季節限定ティーなど、タピオカに依存しない商品を継続的に開発し、顧客を飽きさせませんでした。
出典)タピオカブームが去った後も国内年間利用者約3000万人突破の快 …
また、テイクアウトだけでなく、座席を設けて居心地の良い「ティーカフェ」としての顧客体験を重視したことも、他の店との大きな差別化要因となりました。
出典)タピオカブームが去った後も国内年間利用者約3000万人突破の快 …

ゴンチャの成功は、流行の「食材」を売るのではなく、永続的な「ブランド」を築くことの重要性を示しています。


3. 【事例2:高級食パン】「手頃な贅沢」が生んだビジネスモデルの歪み

「乃が美」や「銀座に志かわ」などが牽引した高級食パンブームも、多くの専門店を生み出しました。
食パンを贈答品や自分へのご褒美という「体験」として演出し、市場を創出しました。
出典)高級食パンブームが消えた理由!高級食パン屋の閉店ラッシュの裏側とフランチャイズの落とし穴を徹底解説 – note

しかし、ブームの立役者であった「乃が美」の失速は、ブームの終焉だけでなく、その事業構造に深刻な欠陥があったことを示しています。

3-1. 失敗の核心:「乃が美」のフランチャイズモデル崩壊

問題の核心は、市場が縮小していく中で機能不全に陥ったフランチャイズ(FC)モデルにありました。

報道によると、FC加盟店の実に9割が赤字状態に陥り、本部への高額なロイヤリティー支払いのために借金を重ねるオーナーもいたとされています。
出典)高級「生」食パン専門店『乃が美』の閉店ラッシュが止まらない!「9 …

この背景には、本部と加盟店の利害対立がありました。

「乃が美」FCモデルの構造的問題

本部の目的

店舗数拡大によるIPO(株式上場)達成と、ロイヤリティー収入の最大化

VS

加盟店の目的

個店の収益性確保と、持続可能な経営

※スマホでは表を横にスクロールできます

項目 データ・主張
FC店の経営状況 9割の店舗が赤字」と報道
出典)高級「生」食パン専門店『乃が美』の閉店ラッシュが止まらない!「9 …
訴訟での主張
(人件費率)
勧誘書面では17.6%だったが、実態は35%超だったと元オーナーが主張
出典)高級「生」食パン専門店『乃が美』の閉店ラッシュが止まらない!「9 …

本部は株式上場を目指して店舗数拡大を急ぎましたが、その急拡大が「行列のできる特別なパン」というブランド価値と希少性を破壊しました。
出典)乃が美の閉店ラッシュから学ぶマーケティング戦略の教訓 – 勝手に …
市場が縮小し始めると、売上が減少してもロイヤリティーを下げない本部と、赤字に苦しむ加盟店の利害が完全に対立し、システムが内側から崩壊していったのです。
出典)高級「生」食パン専門店『乃が美』の閉店ラッシュが止まらない!「9 …

この事例は、ブームに乗った安易なフランチャイズ展開がいかに危険であるか、そして、個店の成功を第一に考えない拡大戦略がいかに脆いものであるかを示す、重要な教訓です。


4. 【事例3:からあげ】過当競争の末路と「本質」の違い

コロナ禍のテイクアウト需要を追い風に、からあげ専門店は爆発的に増加しました。
小規模で開業できる手軽さから参入が相次ぎ、ピーク時には全国の店舗数がマクドナルドを上回ったとも言われています。
出典)マクドナルドよりも店舗数が多い…「から揚げ専門店」閉店ラッシュの“最大の理由” – 女子SPA!

この過当競争(ハイパーコンペティション)の中で、多くの店が淘汰されていきました。

4-1. 「から揚げの天才」の失敗:大企業の論理と市場のミスマッチ

大手外食企業ワタミが展開した「から揚げの天才」は、この戦争における象徴的な失敗事例です。

「から揚げの天才」店舗数の推移

※スマホでは表を横にスクロールできます

時期 出来事 店舗数
2018年11月 ブランド設立 1店舗
2021年 100店舗達成 100店舗
ピーク時 最盛期 約120店舗
2025年初頭 報道時点 6〜7店舗
出典:
ロケットニュース24,
日刊SPA!

「外食史上最速で100店舗達成」という華々しい記録とは裏腹に、ピーク時からわずか数年で店舗数は1桁にまで激減しました。
出典)「から揚げの天才」の現在の店舗数を調べたら、もうかなりヤバい! 風前の灯火じゃないか

失敗の大きな要因は、大企業のコスト構造と、からあげ専門店のビジネスモデルが根本的に合っていなかった点にあります。
アナリストが指摘するように、この業態は本質的に低コストで運営できる個人事業主に向いています。
出典)唐揚げ店の閉店ラッシュは「当然の結果」。飲食大手の参入が”悪手”だった理由 – 日刊SPA!

ワタミのような大企業は、本社経費や人件費、株主への説明責任など、個人店にはないコストを抱えています。
鶏肉や油の価格が高騰しても、スーパーやコンビニの安価な惣菜と競争しなければならないため、価格にコストを転嫁できず、採算が悪化していきました。
出典)「コンビニ唐揚げ」も競合に 唐揚げ店の倒産急増、前年の7倍 …

4-2. 勝者の戦略:「からやま」の強さの秘訣

一方、とんかつ専門店「かつや」の姉妹ブランドである「からやま」は、着実な成長を続けています。
出典)閉店急増の唐揚げ店「からやま」だけ一人勝ちの訳 「ブームに乗ったと …

その強さの秘訣は、オペレーショナル・エクセレンス(現場業務の卓越性)にあります。
「からやま」は、親ブランド「かつや」で培われた効率的な店舗運営やサプライチェーン管理のノウハウを全面的に活用しています。
出典)閉店急増の唐揚げ店「からやま」だけ一人勝ちの訳 「ブームに乗ったと …

さらに、効率化を進める中でも、秘伝のタレに漬け込むなど、美味しさの源泉である「店内仕込み」にこだわり、他との品質の違いを明確にしました。
出典)閉店急増の唐揚げ店「からやま」だけ一人勝ちの訳 「ブームに乗ったと …

そして何より重要なのが、単なる持ち帰り専門店ではなく、定食メニューを充実させた「食事処」としての地位を確立したことです。
これにより、ブームに左右されない日常使いの安定した顧客層の獲得に成功しています。
出典)閉店急増の唐揚げ店「からやま」だけ一人勝ちの訳 「ブームに乗ったと …

「からやま」の競争力の源泉は「からあげ」そのものではなく、それを誰よりも美味しく、安定的に提供し続ける「システム」にあるのです。


5. 失敗の共通項から学ぶ、ブームに頼らない飲食店の設計図

これまで見てきた3つの事例には、業態は違えど、驚くほど共通した失敗のパターンが見られます。

飲食トレンドの罠:4つの共通する失敗要因

📉 単一トレンド商品への過度な依存

ブームの商品だけに頼り、その人気がなくなった後の事業継続性を考えていなかった。
出典)乃が美の閉店ラッシュから学ぶマーケティング戦略の教訓 – 勝手に …

🏢 欠陥のある拡大モデル

特にFCモデルにおいて、加盟店の収益性よりも本部の拡大スピードを優先し、システムが崩壊した。
出典)高級「生」食パン専門店『乃が美』の閉店ラッシュが止まらない!「9 …

💰 基本的な経済原則の無視

原材料費などのコスト上昇と、低価格帯の競合との競争激化を甘く見ていた。
出典)「コンビニ唐揚げ」も競合に 唐揚げ店の倒産急増、前年の7倍 …

🏰 「ブランドの堀」の構築失敗

模倣されにくい独自の価値を築けず、商品がコモディティ化(日用品化)し価格競争に巻き込まれた。
出典)飲食トレンドの光と影:ブームに乗り、ブームに消えた飲食店の失敗事例分析レポート

一方で、「ゴンチャ」や「からやま」のような生存者たちは、持続可能なビジネスを築くための普遍的な原則を教えてくれます。
それは、流行ではなくブランドを築き、品質を重視した効率的なオペレーションを徹底し、優れた顧客体験を提供し続けることです。


6. ブームが去った後に、本当に重要なこと

ここまで見てきたように、一過性のブームに依存した経営は非常に脆いものです。
大切なのは、ブームを「市場への参入点」と捉え、その先にある持続可能なビジネスモデルを構築することです。
出典)飲食トレンドの光と影:ブームに乗り、ブームに消えた飲食店の失敗事例分析レポート

そして、どんなに素晴らしいブランドやこだわりの商品、卓越したオペレーションを構築したとしても、その価値がお客様に伝わらなければ、存在しないのと同じです。

特にブームが去り、市場が落ち着いた後には、新規顧客をいかに獲得し、リピートしてもらうかという「集客」の仕組みが、お店の生死を分ける生命線となります。
しかし、日々の業務に追われる中で、専門知識が必要なWeb集客にまで手が回らない、というのが多くのオーナー様の実情ではないでしょうか。

6-1. Web集客の課題を解決する選択肢

もし、このようなお悩みをお持ちでしたら、飲食店のWeb集客を自動化し、専門知識がなくてもプロレベルの成果を目指せるツールがお役に立てるかもしれません。

株式会社オールフィットが提供する「TITAN(タイタン)」は、まさにそのような飲食店オーナー様のために開発されたオールインワンの集客ツールです。
AIが広告効果を常に分析し、予算内で最大の効果が得られるよう自動で最適化してくれるため、集客の専門家がいないお店でも、手間をかけずに安定したWeb集客の基盤を築くお手伝いができることもございます。

もし、もう少し詳しい情報にご興味をお持ちいただけましたら、公式サイトをご覧いただくこともできます。


7. まとめ

飲食業界の華やかなブームの裏には、数多くの失敗と教訓が眠っています。
タピオカ、高級食パン、からあげの事例が共通して示すのは、ブームという波に乗ることよりも、波が去った後も沈まない、頑丈な船(=ビジネスモデル)を造ることの重要性です。

ブームに頼らない店づくりの要点

  • ブランドを築く:流行の「食材」ではなく、永続的な「ブランド」や「体験」を売る。
  • オペレーションを磨く:品質を維持しつつ、効率的な供給・運営体制を構築する。
  • 顧客基盤を固める:テイクアウトだけでなく「食事処」としての地位を確立し、日常利用の顧客を獲得する。
  • 価値を伝え続ける:構築した価値を顧客に届け、新規獲得とリピートを促す「集客の仕組み」を持つ。

この記事が、これから飲食店を始められる方、そして今まさに経営されている方にとって、一過性の流行に惑わされず、お客様に長く愛される店づくりを考える一助となれば幸いです。

 

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